パリパリ派

日々のあれこれ

セイレムとクトゥルフの覚書 1

FGO1.5部の最後、「異端なるセイレム」をプレイし終えたので雑記を。

 

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始まる前、予告の段階から「人狼っぽい」「クトゥルフ神話っぽい」といった憶測や、発表された「劇中劇」の言葉から、「TRPG的な話では」といった期待が寄せられていた。

実際、いずれの要素も兼ね備えた物語であり、配信が分割で行われたことにより考察の時間が与えられたことで非常に深読みが捗り、楽しく読み進められたのだが、広げた風呂敷を畳み損ねた感が否めない急な終わりを見せてしまった為に不完全燃焼感が残っている。

だが、その分「まだ残りの配信があるんじゃないか?」と言われるほど考察の種には満ち溢れているのでちょっとだけ気になって面白かったなという部分や、元ネタについての知識をちょっと記しておきたい。TYPE-MOONにも歴史にも神話にも造詣は浅いので突っ込みどころ満載にはなるが容赦されたい。

 

 

舞台「セイレム」

今回の特異点はアメリカ東海岸の町、ボストンにほど近い港町だ。

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(セイレムの周辺。もちろん行ったことはない。ありがとうグーグル先生)

全力でウィキペディアに頼って行こう。

有名なのは「異端なる」の章タイトルに違わず「魔女狩り」の歴史。今では主要な観光資源になっているらしい*1。それでいいのかセイレム。

この魔女狩り、「セイラム魔女裁判*2」では、実際に200人以上が告発され。20人以上が死亡したらしい。村人同士で疑いあい、無実であろうと互いに告発しあったという狂気の事件が今回の題材だ。

この歴史上の事件で重要な役割を果たした……というか、最初の「悪魔憑き」として名前が挙がる少女アビゲイル*3はゲーム内でも中心人物として関わってくる。この少女、ゲーム内だとまあ無邪気な子供なのだが、実際の歴史では自分が最初の悪魔付きになったのをきっかけに、故意かはわからないが村人を告発しまくって相当の人数を殺している結構エグい女だ。ともにゲーム内に登場する召使いのティテュバアビゲイルの家の奴隷であり、彼女が悪魔付きとなったきっかけの魔術を使ったとして告発されている。(しかしティテュバは処刑されなかったらしい。なんでだ)

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(この右の少女がアビゲイル。タイトルから出るので当然重要人物)

 

 

 

クトゥルフ神話*4ラヴクラフト

とっても有名な創作の神話。H・P・ラヴクラフトとその友人ダーレスたちによって作り、まとめられた神話体系で、できたのは20世紀と非常に最近だがシェアドワールド的な運用のしやすさから、現代に至るいろいろな作品でも元ネタとして使われていたりする。

元々ラヴクラフトが、人間的な情念ではなくもっと圧倒的な「宇宙的恐怖」と呼ばれる恐怖を題材としたホラー小説群を起点とした物語群なので、「這い寄る混沌」や「名状しがたいもの」など、いかにもオカルト好きのしそうなニッチな匂いのするものなのだが、最近ではその認知度から「世界の神話」として下のような一般向けの本にも載っていたりする。*5

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(実家にあった本。割と他のFateの元ネタも知れるので読み直すと楽しいのでオススメ)

まあ、何も知らないままで読むとギリシャ神話とかエジプト神話とか数千年の歴史満載で人間臭いエピソードに満ちた神々の中で、いきなり高々2世紀の、しかも意味のわからない神々が出てくるので忌避してしまったりもするのだが。 

 

さて、そんなクトゥルフ神話だが、今回の「セイレム」で最も重要となるのはその始まりであるラヴクラフトの著作だと言えるだろう。正直に告解すれば、セイレムの2日目に「これはクトゥルフの元ネタを知らねばならんな」と勢いで買ってちょっと読んだだけなので偉そうなことは何も言えないのだが、それでも断言できるほど「元ネタ」としての色が濃かったのでここに挙げておく。

とりあえずは創元推理文庫ラヴクラフト全集5巻を読んだのだが、セイレムから入るならばこれから読んで間違いないと思った。理由としては、キーパーソンであるラヴィニアが出てくる「ダニッチの怪」、セイレムを元にした架空の街「アーカム」が舞台となる「魔女の家の夢」。

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(ラヴクラフト全集の表紙。こわい)

さらにセイレムを最後までプレイした上で読むのには、6巻が良さそうだ。本編にもアビゲイルの叔父として登場するランドルフ・カーターが描かれた作品が数多く収録されており、特に「銀の鍵の門を超えて」と「未知なるカダスを夢に求めて」は本編のラストを知る上で読んでいるのと読んでいないのとでは大きな隔たりが生まれるものと思われる。

 

まだ他の巻を読んでいない上での発言なので性急ではあるが、上に挙げた2冊はセイレムのプレイ前後で読むと面白さが非常に上積みされるのでぜひ読んでもらいたい。

物語単体としては、いかんせんそこそこ古い海外小説であり、訳も古い上に曖昧な恐怖について語る物語の特性上正直読みやすいものとは言い難い。しかし、恐怖の描き方というか、神話的生物の仄めかすような登場の仕方や、SF的とホラー的の中間のような不可思議な現象の数々は読んで十分にワクワクさせてくれるものなので、物語は選ぶが単純に面白く読むことができる作品も多いと感じられる。特に、「ダニッチの怪」あたりは不気味な青年、図書館の魔道書、村を襲う大規模な怪奇現象と、これでもかというくらいファンタジックにかつホラーに仕上がっていてお勧めできる一品だった。

 

 

セイレムの中身自体については次に回そう。

(続き ↓)

 

 

norikuttenorinori.hatenablog.com